ミネアポリスの話

アメリカ物理学会には年周期の大きな会議が2つ存在し、それぞれMarch MeetingとApril Meetingとよばれている。もちろん、各自が名前に冠している月に開催される。その他にも分野ごとに毎年学会が開かれているのだが、今回はミネアポリスで開催されたApril Meetingで発表を行ったので、そのときの話をしようと思う。

ミネアポリス・セントポール国際空港は、ミネアポリスの中心からは車で30分くらい離れたところにある。といっても市街までの道のりのほとんどは横に何レーンも広がっているような道路なので、体感としてはあっという間にホテルに着いたように思う。見渡す限り高層ビルが立ち並んでいてかなり都会の様相を呈しているが、なんと路上を人が全く歩いていない。到着した夜は雨が降っていたので、天気のせいかなと思っていたのだが、驚いたことに翌日の朝も同じ様子であった。状況は正午になっても変わらず、車は道路を走っているのだが、とにかく人の声すらしない。ガラガラの路面電車が街を巡回している。おまけに4月だというのに吹雪いてくるので、もうこれが本当に現実なのかわからない気分で外を歩くのであった。あとになって研究室のミネソタ出身の学生から聞いた話であるが、郊外の住宅価格がかなり安いために都心部には人は住んでいないとのことだった。

そういうわけで市街地に人は存在しないことがわかったので、休憩時間を利用して少し郊外にあるMinnesota Institute of Artsに行くことにした。この美術館は素晴らしかった。かなりの混雑具合で、なるほど、こういうところに人が集まっているのだな、と感心した。

出会った人々はどなたも優しかったように思う。空港にはボストン・ローガン空港名物の怒鳴り散らす職員もいなかったし、訪れたあちこちのレストランでは非常に丁重に応対していただいた。観光地ではないので積極的に訪れることはあまりないだろうが、「中西部最大の都市」をWikipediaのページが自負しているだけのことはあるので、また学会などの機会があれば訪ねてみたい。